日本酒の作り方|10の工程をプロが解説する完全ガイド
普段何気なく飲んでいる日本酒は、米と水という素朴な原料から、職人の技と時間をかけて造られています。一本の日本酒が完成するまでには約2か月以上の工程があり、それぞれの段階で精緻な管理と判断が求められます。この記事では、日本酒の作り方を10の工程に分けて、プロの視点でわかりやすく解説

よつば
2026年5月5日

普段何気なく飲んでいる日本酒は、米と水という素朴な原料から、職人の技と時間をかけて造られています。一本の日本酒が完成するまでには約2か月以上の工程があり、それぞれの段階で精緻な管理と判断が求められます。この記事では、日本酒の作り方を10の工程に分けて、プロの視点でわかりやすく解説します。
日本酒の主な原料
日本酒造りに使われる原料はとてもシンプルです。
主原料は米・米麹・水で、酒造好適米と呼ばれる酒造り専用の品種が使われます。山田錦・五百万石・美山錦などが代表的な酒米です。
米麹は蒸米に麹菌を繁殖させたもので、米のデンプンを糖化する重要な役割を担います。水は酒造りの命とされ、軟水・硬水によって酒質が大きく変わります。
普通酒や本醸造酒には、これらに加えて醸造アルコールが添加されますが、純米酒は米と米麹、水のみで造られます。
工程1|精米
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日本酒造りの第一歩は精米です。玄米を削って雑味の原因となる外側の部分を取り除く工程です。
精米歩合とは、玄米を削って残った白米の割合のことで、純米酒なら70%以下、純米吟醸酒なら60%以下、純米大吟醸酒なら50%以下まで磨きます。精米歩合が低いほど雑味が少ない酒になりますが、その分時間と労力もかかります。
精米には数十時間から100時間以上を要することもあり、米を割らずに均一に削る高度な技術が必要です。
工程2|洗米・浸漬
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精米した白米は、表面のヌカや汚れを洗い落とします。これが洗米です。
洗米後は水に浸して米に水分を吸収させます。これが浸漬で、米の品種や精米歩合によって浸漬時間を秒単位で調整します。吟醸酒のような高精米の米は短時間、普通酒の米は長時間と、繊細な判断が求められる工程です。
工程3|蒸米
水を吸わせた米は大きな甑(こしき)と呼ばれる蒸し器で蒸し上げます。
蒸米は外硬内軟(がいこうないなん)といって、外側は硬く内側は柔らかい状態に仕上げるのが理想とされます。この絶妙な硬さが、麹菌の繁殖や発酵に最適な状態を生み出します。
蒸米は使う場所によって、麹用・酒母用・醪用に分けて冷却されます。
工程4|製麹
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製麹(せいきく)は日本酒造りの心臓部とも呼ばれる重要な工程です。
蒸米に麹菌を振りかけて、約2〜3日かけて麹菌を繁殖させます。麹室と呼ばれる温度・湿度が厳密に管理された部屋で、職人が数時間おきに米の状態を確認しながら作業します。
完成した米麹は、米のデンプンを糖に変える酵素を多く含んでおり、これがアルコール発酵の起点となります。
工程5|酒母(酛)造り
酒母(しゅぼ)は「もと」とも呼ばれ、健全な酵母を大量培養するための工程です。
蒸米・米麹・水・酵母・乳酸を小さなタンクに入れて、約2週間かけて酵母を増やします。乳酸は雑菌の繁殖を抑える役割があり、伝統的な「生酛(きもと)系」と現代的な「速醸系」の2つの製法があります。
生酛系は手間がかかりますが、複雑で深みのある酒質に仕上がります。速醸系は工程が短縮されているものの、安定した品質の酒造りができます。
工程6|醪(もろみ)の仕込み
酒母ができたら、いよいよ醪(もろみ)の仕込みに入ります。日本酒造りで最も重要な発酵工程です。
三段仕込み
日本酒の仕込みは「三段仕込み」と呼ばれる独特の方法で行われます。酒母に米麹・蒸米・水を3回に分けて加えていく製法で、初日の「初添」、翌日の「踊り(休み)」、3日目の「仲添」、4日目の「留添」の4日間で完成します。
3回に分けて加えることで、酵母が雑菌に負けずに健全に発酵を進められます。
並行複発酵
醪の中では、麹菌の酵素が米のデンプンを糖に変える「糖化」と、酵母が糖をアルコールに変える「アルコール発酵」が同時に進行します。これを「並行複発酵」と呼び、世界的にも珍しい高度な発酵方式です。
醪は約20〜35日間、低温でゆっくりと発酵を進めます。吟醸酒は10度前後の低温で長期間発酵させ、フルーティーな吟醸香を生み出します。
工程7|上槽(搾り)
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発酵が終わった醪を布や機械で搾る工程が「上槽(じょうそう)」です。これによって日本酒(清酒)と酒粕に分けられます。
上槽の方法には、機械で押し搾る「ヤブタ式」、伝統的な木槽(きぶね)で搾る「槽搾り(ふなしぼり)」、布袋に入れて吊して自然滴下させる「袋吊り(しずく取り)」などがあります。袋吊りは最も繊細で雑味のない酒が取れるため、高級酒に用いられます。
工程8|濾過
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搾った酒は活性炭などで濾過し、雑味や色味を取り除きます。
濾過の度合いは蔵元のこだわりが反映される部分で、しっかり濾過する蔵元、最低限の濾過にとどめる蔵元、まったく濾過しない「無濾過」の蔵元などさまざまです。無濾過酒は色味や風味成分がそのまま残り、複雑で個性的な味わいになります。
工程9|火入れ・貯蔵
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濾過した酒は、60〜65度に加熱する「火入れ」を行い、酵母の活動を止めて品質を安定させます。
火入れは出荷前と貯蔵前の2回行うのが一般的ですが、生酒は火入れをまったく行わず、生貯蔵酒は出荷前のみ、生詰め酒は貯蔵前のみと、火入れの有無やタイミングで酒質が変わります。
火入れ後は数か月から半年程度貯蔵することで、味わいがまろやかに熟成します。
工程10|瓶詰め・出荷
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熟成を終えた酒は、最終的に水で度数を調整(加水)して、15〜16%程度のアルコール度数に整えます。加水しないものは「原酒」と呼ばれ、17〜20%程度の高い度数のまま出荷されます。
瓶詰め後は出荷され、いよいよ消費者の手元に届きます。仕込みから出荷までは2か月から半年程度、貯蔵酒の場合は1年以上かかることもあります。
まとめ
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日本酒の作り方は、精米から始まり、洗米・浸漬・蒸米・製麹・酒母造り・三段仕込み・上槽・濾過・火入れ・瓶詰めという10の工程を経て完成します。各工程で職人の技と科学的な管理が組み合わされ、米と水というシンプルな原料から複雑で奥深い味わいの酒が生まれます。
特に並行複発酵という世界でも珍しい発酵方式は、日本酒造りの真骨頂です。一本の日本酒の背景には、約2か月以上の時間と、何十人もの職人の手仕事が詰まっています。次に日本酒を口にする時は、この長い工程に思いを馳せて、一杯の重みを感じてみてください。
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